〈説明〉
会派によってはコンクールのための吟と流統の吟の両方を指導しているところもあるようですが、高段者になればそれも難しいことではないでしょう。また若い人にとっては吟詠におけるアクセントの存在はさほど大きな問題ではないのだと想像します。
ネットでアピールの件ですが、若い人たちは我々六十代(?)には想像もつかないほどネットに密着した生活をしていますので、効果はあると思います。ただ、内容によって反響の大きさは大幅に差が出るものと思います。目にはとまっても、耳には入っても、関心を持たれなければ無駄になりますし、逆に、つまらないものだと思われては逆効果、藪蛇となってしまいますので、ネットに挙げるからには絶対につまらないと思われそうなものは出さないことが重要です。この判断は吟界の常識ではなく、一般人の目線で見ることが肝心です。
現在の状況を客観的に見てみますと、詩吟の認知度は囲碁、将棋以下であり、柔道、剣道にも水をあけられています。絶滅危惧種の箏・尺八と同じくらいです。
十年ほど前になりましょうか、あるお笑い芸人が詩吟ではない節を『吟じます』と言って下ネタなどを歌い、一世を風靡(大袈裟?)しましたが、当時詩吟を習っていた子供たちが学校でからかわれることが多く、問題になっていました。あの頃世間でもう少し詩吟の認知度が高ければ、あんな芸人も出現しなかったでしょうし、詩吟を習っている子供たちがからかわれることもなかったと思います。このために詩吟をやめてしまった子もいたと聞いています。世間が詩吟を知らなかったために起きた事件です。ひとえに吟界の責任です。
テレビで吟詠剣詩舞を放映してもらえることは本当にありがたいことですが年間に数回で、しかも反響が少なければさらに減らされてしまうかもしれないとのこと。そのため財団では、視聴者からNHKに投稿するよう、盛んに呼びかけているのです。インターネットの場合は個人からの発信ですから、延べ回数は膨大な数が期待できるはずです。しかし個人であるが故の心配もあります。それは内容の危うさです。放送局のように大勢の人々によって作り上げられた番組と違って、個人の考えで作ったものを大勢の人が見たり聞いたりするわけです。内容によっては誤解を招かないとも限りません。その種の心配をせずに済むよう、多くの人が世の中へ詩吟を発信するようになって欲しいものです。
一般の会員さんも自身の所属する会派からの発信なら誇らしく周りの人に教えるでしょうから宣伝効果にもなりましょう。古い会員さんは、所属の会派に対する愛着が強いでしょうからなおさら宣伝に力が入るでしょう。
ただ一般的な傾向として、吟に長けた方でネットに詳しい方が少なく、ネットに詳しい方で吟の上手な方が少ないという現実があります。会派を挙げて推し進めていかないと成しえないことだと思います。それぞれの流派・会派の宣伝合戦の形になるでしょうが、悪いことではないので大いに特徴をアピールしていきましょう。