公益財団法人 日本吟剣詩舞振興会
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吟詠音楽の基礎知識 2021年5月



〈説明〉

 仮に男声の平均本数が1本、女声の平均本数が6本の会派の場合について説明します。先導が女声の場合、男声は6本の1オクターブ低い水7本、つまり1本より7本低く吟じることになり、6本と水7本の合吟になります。また、先導が男声の場合、女声は6本より5本低い1本で吟じることになり、男女とも1本の合吟になります。この二通りを比べますと、前者は女声が十分な発声をし、男声が緩んだ発声をすることになり、後者は男声が十分な発声をし、女声が緩んだ発声を強いられることになります。男女の人数が同じ位だと仮定すると、6本と水7本の合吟の方が1本の合吟より力強く響くことは容易に想像できます。まして女性の割合が圧倒的に多い昨今では、6本を優先する方が良いに決まってます。女性が多いのに1本の合吟にするとほとんどの声が緩んだ声になり、会場全体がお通夜のような雰囲気になります。男性の割合が多い会派は別として、大合吟の先導はなるべく女声にしましょう。

 普段1本の男性は6本の「ファ」までは1オクターブ下げなくても十分余裕で発声できますので、承句・結句の前半は女声と同じ本数で吟じられ、力強い声を使うことができます。つまり一吟の間、1オクターブ下げたり戻したりすることになり、慣れるまでは吟じにくいかもしれませんが、数回で上手になれるはずです。

 1本と6本のように5本違いの本数で同時に吟じられるという噂は間違いです。

 常に5本違いですから常にハーモニーしてはいますが、詩吟には無いハーモニーが頻繁に出てきてしまいますので、まともな音楽にはなりません。(図1)をご覧いただくとすぐにご理解いただけると思います。6本で吟じている女性の立場から見ると、男性の声の中に「ファ#」と「ソ」の声が聞こえてきてしまい、今の節になりません。同様に、1本で吟じている男性の側から見ると、女性の声の中に「ラ#」と「レ」の声が聞こえてくるので、やはり詩吟の節に聞こえません。




 つまり、1本と6本の吟を同時に吟じるということはお互いに奇天烈な音を聞きながらの吟になってしまうのです。吟の節が進行せずに、例えばどちらも「ド」の音で延ばしている状態が続いているなら5本差のハーモニーが響き、おかしくないのですが、今の節が進行しているときの「ド」は1本から聞くと「ドファ」となり「陽音階」または「長音階」に聞こえますし、6本の側から聞くと「ドソ」となり、やはり「陽音階」または「長音階」に聞こえ、詩吟のようには聞こえません。

 男女とも6本で吟じ、男性は1オクターブ低く吟じるという方法を最初に説明しましたが、男声が伴奏音の役目をする方法もあります。その基本は、吟の節が中音の「ミファ」のときは低音の「ラ」の音程で吟じ、吟の節が高音の「ラシド」のときは伴奏を中音の「ミ」で吟じ、吟の節が低音の「ドシラ」のときは伴奏を低音の「ミ」で吟じるという方法です。次に一例を挙げましたのでコンダクターを弾きながら声を出してみましょう。(図2)




 これを参考に、男女を交替したり、部分的に和音をやめたりして変化をつけましょう。