〈説明〉
長音階は「ド」を主音とした「ドレミファソラシド」、短音階は「ラ」を主音とした「ラシドレミファソラ」、陰音階は「ミ」を主音とした「ミファラシドミ」というそれぞれ違う形の音階でできています。ですから、それぞれの主音がすべて同じ「ハ音」でも、同じ音階にならないことがお分かりいただけると思います。
ところで、詩吟の本数を一般の音楽家に伝えるとき、私の本数は「6本」ですと伝えても解ってもらえることはほとんどありません。音大卒業の専門家でも「陰音階」は知っていても「6本」の意味は試験のときに勉強した位で、普段は使うことがないため、「ミファラシドミ」の「ミ」が「6本D」なのだと理解する人は1パーセントもいません。
もし詩吟を知らないピアニストに伴奏を依頼することになったら本数を知らせなくてはなりません。さてどのように伝えましょうか。
実は陰音階と短音階は和声的に共通点が多いので、短音階の名前で伝えることが有効と思われます。しかし主音の高さを変換して伝えなくてはならないので簡単ではありません。例えば「6本」で伴奏してもらいたい場合、「ミファラシドミ」の「ミ」が「6本D」ですから。短音階の場合は「ラ」の音を伝えなくてはならないので、「Gト音」であることを知らせ「ト短調」または「gモール」と伝えます。
重複しますが、ミとラは5本違いですから、ミが6本ならラは11本となり、表1から11本=ト=Gであることから「ト短調「」gモール」となります。
このように、ピアノ奏者に詩吟の本数を伝えることは大変面倒でしかも間違えやすいため、あらかじめ分かり易い表にしておくと便利ですので表に示しておきます。
この表はあくまでも吟詠家とピアニストの通訳のための表であり、上下の音階が同じであるという意味ではありません。
なお、1本、2本、3本は13本、14本、15本と同じ意味であり、また12本、11本、10本、9本、8本は、水1、水2、水3、水4、水5本と同じ意味です。
初心者を指導するときは本数に偏見を持たず、たとえ女声が1本だろうが、男声が8本だろうが、自然に聞こえれば何本でもかまわず、慣れたら少しづつ本数を上げてみて、ウラ声にならないように注意深く見守りましょう。