〈説明〉
この説明を読む前にコンダクターかその他のキーボードをお手元に置きながら読んで下さい。お手元にキーボードが無くても、スマートフォンをお持ちでしたら「吟トレ」と言うアプリで試してください。吟詠に使われる代表的なハーモニー(和音)は、ラドミ(乙二三)、レファラ(二′三五′)、レファシ(二′三六′)、ミシ(三六)の4つです。ここでは( )内にコンダクター譜を記しました。 なお、コンダクター譜は(水三八)がミ、(乙五)がラ、(一六)がシ、(二七)がド、(二′)がレ、(三′)がファです。
吟の節にハーモニーを加えるためには、簡単な吟詠の伴奏法を覚えると便利で分かりやすいと思いますので、吟の音に対する伴奏音の決め方を説明します。
今、吟の節がミ(三)だとします。この時使える和音は何ですか? 「ミ」が含まれている和音を見てみますと、「ラドミ」と「ミシ」がありますから、使える音は「ラド」または「シ」です。吟の節がファ(三′)のときは? 「レファラ」と「レファシ」がありますので使える音は「レラ」「シ」です。…… 疲れましたか? お手元に音を出すものが無いと最後まで読むのは辛いかもしれませんね? 何らかのキーボードがお手元にあるものとして話を続けます。吟の節がラ(五)の場合は?ラドミ(乙二三)とレファラ(二′三五′)がありますので使える音は「ドミ」と「レファ」です。吟がシ(六)の時は「レファシ」「ミシ」がありますので、「レファ」と「ミ」が使えます。もう一息ですから頑張りましょう! 吟がド(七)の時は?「ラドミ」しかありませんので使う音は「ラミ」です。
ここまで辛い思いをさせましたが、この後はずっと楽な話になりますので。ご安心ください。
詩吟の伝統的節回しはほぼ、隣へ隣へと音階に沿って移り行く場合がほとんどです。このことと、先ほどの音選びを合わせて考えてみますと。例えば転句の節回しが「ドシ……ドシ……ドシラ…シラ」だとした場合、「ドシラ」に共通する和音を選ぶと「ミ」であることが分かります。どうして? その答えを説明するにはもう一度前段の音選びの話をすることになりますので、あとでゆっくり確かめてみてください。また吟の節が中音から下がってくるとき、「ファミ……ファミド……シラ」のとき「ファミド」の共通和音は「ラ」となります。そして承句・結句の冒頭は「ラシ……ドシラ」ですので共通和音が「ミ」となります。
一般的に伴奏としての和音は主旋律(この場合吟の節)より低い音を選ぶのが普通で、吟の節が高音の時は、伴奏音は中音のミ(三)。吟の節が中音の時、伴奏音は低音のラ(乙)そして吟の節が低音の時、伴奏音は低音のミ(水)ということになり、とても単純な音選びとなり、覚えるのも吟ずるのも簡単にできるはずです。
図1の譜は上段が一般的な絶句の譜となっており、中段が詩文、下段が伴奏譜ですので、この伴奏譜で詩文を吟じればそれが第二声部となります。実際には、ハーモニーを用いる時間は半分くらいにした方が変化のある合吟になると思います。慣れてきたら「レ」「ファ」「シ」「ファ#」なども使ってみましょう。
※こちらの質問は『吟と舞』2020年5月号に寄せられたものです