〈説明〉
現在使われております財団コンクールのCD伴奏曲はそれ以前に使われておりました「音程ガイド音」に代わるものとして、製作されました。きっかけは、レジャーチャンネルで吟詠コンクールを放映するにあたり、一般の視聴者が音程ガイド音に違和感を感じるだろうとの考えからでした。
当時、吟界にカラオケが無かったわけではありませんが、コンクールの公平性と、どんな節調にも対応しなくてはならないという条件から、特徴的な節を持たない基準音「ミ」のみとし、主和音「ラドミ」を感じさせる「ドミー」を数回のみちりばめ、音楽とは程遠い「音程ガイド音」として用いていたわけです。
これはこれでよく考えられた方法ではあったのですが、一般にご披露するにはあまりにマニアックで、吟詠に対する世間の印象が悪くなるのではないかとの気遣いから、現在の「箏・尺八のCD伴奏」に変更したのです。長年用いてきた「音程ガイド」をやめて、「CD伴奏」に代えることは財団にとっては大きな変更であったと思います。この時の決心の大きさが「音程審査」から「調和審査」への名称変更にも表れていると思うのです。
現在この「調和審査」の名称がもたらす不都合といえば、ひとえに「解りにくい」という点だと思います。「音程審査」に戻しても実害、不都合は起きないと思いますが。これは吟詠家の皆様が決めることだと思います
〈説明〉
1分秒40秒位の「CD伴奏」を、とのことですが、私自身は大賛成です。以前から剣舞の皆さんが、『吟の進行が遅く、舞いにくい。途中でジッと動かず待たなくてはならない』とおっしゃいます。有名な演目には、昔から剣舞の各流派に伝わる流祖の「振り付け」があるでしょう。しかし当初の振り付けは1分30秒から40秒の吟に合わせた振りですから。現在の長い吟ではどうしても時間が余ってしまいます。私の考えでは1分40秒から45秒位の吟をモデルにしたカラオケが適当ではないかと思います。
しかし心配な点もあります。もし、この短いカラオケが出来た時、これを利用してくださる方がどの位いらっしゃるかということです。まず出来た当初は使う方が少ないと思います。なぜなら、今までに2分ぎりぎりで吟じることが習慣となっている方が圧倒的に多いためです。剣舞の立場から強力に要求・推進があれば比較的早期にこの短いバージョンのカラオケが実現するでしょう。
一方、吟詠家の多くは1秒でも長く吟じたい。1秒でも長く舞台に立ちたいという方が多いはず。短いカラオケを選ぶ人が多くないことは容易に想像できます。
FMの収録の時、吟じ終わってOKが出ても「何秒でしたか?」と尋ね、「1分50秒でした」と言われると、「速すぎた!!もう一度お願いします。」とおっしゃる方がほとんどです。あらかじめNHKの側から「絶句は1分55秒以内で」と指示があるにもかかわらず。1分50秒では不満な方が多いのです。放送局の立場では文字通り秒単位の編集で詰め込む苦労があり、短い吟は大歓迎なのですが、吟者の立場は逆なのです。
こう考えると短い吟がはやる時代が来るとは考えにくいのですが、
吟の芸術性の向上の為には短い吟を推奨・啓蒙していかなくてはならないと思っています。